参加者は80人です。お母さんやお父さんが来ていて、150人からの参加者になりました。
進行は松永先生がされます。
日程のこと、特に集合解散のこと、持ち物についてなど細かに説明がなされます。
質問のコーナーになってびっくりしたことがありました。
途中保護者が見学に行ってもいいですか?
(え~、2泊3日だぞ、途中というと、中日かい?、そしたら、結局毎日親の顔見ることになるじゃないか。)と、福田さんはあきれてしまいました。
松永先生は「中1日ですから、見学は考えていません。子供の成長のためにも、親御さんのいない日を過ごさせてあげてください。」
「そうですよね。わかっているんですが、何せ、子どもだけで外に出すのがはじめてなもので。わかりました。」
(子供が親離れしてないんじゃなくて、親が子離れしてないな~)
「虫はいないですよね?」
(おいおい、いないはずないだろう)
すると、育成委員会のスタッフの一人のおじさんが、
「あんたね~、キャンプに行くんだよ! ホテルかどっかに遊びに行くんじゃ…」
と、いきり立って話すのを松永先生が優しく制して、
「そうですね~自然の中に行くわけですから、虫はいます。でも大丈夫です、命を落とすような毒虫とか動物はいませんから。毎年、虫刺されはいますが、問題ないですよ。」
「うちの子、虫刺されに弱いんです。」
「そうですか、虫刺されは、刺されているうちに虫刺されにも強くなるものなんです。虫によては少し痛かったり、かゆいですが、ちょっとは刺されたほうがお子さん強くなりますよ。そんな風にたくましくしたくて、このキャンプにお出しになるんでしょう?」
松永先生はやさしく親御さんを諭していきます。
(いや~松永先生に学ぶところは多いな。奥山村のキャンプの説明会でも、こんな質問が出るんだろうな。メモしとくか。)と、福田さんは一生懸命にメモを取りました。
お父さんお母さんも、この説明会でだいぶ安心してくださったようです。
終了後、松永先生と福田さんは、一緒にお疲れさん会をしました。
「先生、あの、育成会のおじさんたちはいつもあんな感じなんですか?」
「ああ、集合場所でお母さんを怒鳴りつけたこともあってね…」
「それでよく子供たちが付いてきますね。」
「まあ、それもあって、参加者が減ってるのかもしれんがね。本人は大切な教育だとおっしゃるもんだから、どうにもね~」
「確かにそれは正論ではあると思いますが。難しいですね。」
「君にも迷惑かけるね。」
「いえいえ、何でもないです。」
キャンプ当日、参加者は、75人になってしまいました。
風邪を引きましたとか、お腹が痛いとか、はては、ちょっと都合が悪くなりました。
そう知った時点で、育成会のおじさんは、ご機嫌が斜めです。
オジサンがご機嫌斜めだものですから、教え子だったリーダーたちはちょっとビクビクている感じがします。
しかし子供たちはそんな事お構いなしです。
元気にはしゃぎまわっています。
福田さんはこの風景を見て、(子供はこうでなくっちゃいけない。大人に飼いならされたような今の子どもは不自然だ)とほほえましく見ていました。
自然の中で、自然な子供を育ててあげないといけない。これでいいんだ。と、思っていた時です。
「こら~!いつまできゃあきゃあ言ってるんだ、きちんと集まって、言われた班ごとに並ばないか!~」と、育成会のおじさんが怒鳴りました。
集合場所全体が、シ~ンとなりました。
松永先生は何事もなかったように、出発のセレモニーに入りました。
出欠を取って、市役所の人のあいさつを受けて、ご家族の人に行ってきますのあいさつをして、それぞれのバスにリーダーを先頭に乗車していきました。
まるで、子供と永遠の別れとでもいうように、ちぎれんばかりにハンカチを振って、涙を流しているお母さんもいます。そうかと思えば、お父さんとどこかに出かけるのでしょうか、おしゃれな洋服を着てさっさと車に乗り込んでしまうお母さんもいました。
そんな風景を見ながら、福田さんは、(子供のキャンプは一筋縄ではいかないかもしれないな~)と思っていました。
キャンプは、松永先生に伺った通りに展開していきました。
福田さんのイメージと少し違ったのは、結構体育会系というか、軍隊調というか、そんな感じで毎日が進んでいったということです。
かの、育成会のおじさんが、ほとんどのシーンを仕切っています。
他の育成会の人たちは、食料の配布の段取りをして、あとは、本部テントでお茶を飲んでいることが多いのです。
そのおじさんだけは、集合や、色々な指導を計画書を無視して進めていきます。
準備の段階でしていた役割の人が説明を終わった後に再度出てきて、もう一度、「いいかお前たち…」と同じ説明を繰り返すこともしばしばでした。
とはいえ、リーダーたちは一生懸命に子供たちの面倒を見てくれ、楽しいキャンプがあっという間に終わりました。
雨に降られることもなく、福田さんが、 正直拍子抜けするほど、お話を聞いた通りにキャンプが進んだのです。
まるで、昨年と同じキャンプを、劇か何かで再演しているのではないかと思うほど、先生から聞いたようにキャンプが進んで、終わりました。
出迎えのご家族は子供を見て、出発の時以上に涙ぐみ、それに誘われて子供たちも涙ぐみ、リーダーも涙ぐみ、みんな涙ぐんでいました。
しかし福田さんはこの涙が唯一イメージとは違ったことに気が付きました。
先生からお話を伺ったときは、リーダーと子供たちが別れがたく、一緒に過ごした2泊3日の体験を惜しむように抱き合って、涙ぐむのかと思っていました。
しかし現実は、子供はご家族と、そしてリーダーはリーダー同士で抱擁をして涙しているのです。
なにか、2泊3日のキャンプを無事乗り越えて、普段の生活に戻れることを喜んでいるように見えたのです。
福田さんは、その疑問を、打ち上げのときに松永先生にぶつけてみました。
すると松永先生は「そうか、今までそんなこと考えてもみなかったな。」と、首をかしげていました。
まあ、秋の思いで会で様子を見ましょうということになりました。